幸島秀之選手

【千葉の爆裂パンチャー】

「ハーイ!」
店に訪れる外国人にも、気さくな接客で提供していく、刺身の三点盛り。成田にある楽酒ダイニング「武尊(ほたか)」

新鮮な馬刺しの盛り合わせ、センスを感じる粋なお通し。生ものから揚げ物、炒め物まで、日本酒も飲み比べできたり、品書きのどれを頼んでも食を楽しませてくれる。

人懐こく常連さんとの会話を弾ませながらも、次から次へと料理を仕上げていく幸島選手の姿は、もてなしの職人のようだ。

そんな目まぐるしい日常から、オフではキックの世界に没頭する。

強烈なパンチを繰り出して相手を圧倒する試合運びを理想とするハードパンチャー。のはずが、現実の試合はそうウマくはいかない。激しく練習する中にも、試合ではどこかウマく立ち回れない、その「不器用さ」こそが幸島選手らしさ。

僕が試合会場で撮影機材の準備をしていると、わざわざカメラポジションまでやってきて、必ず声をかけてくる。そんな飾らない、どこにでもいるような「あんちゃん」が、リングに上がると豹変させるその表情にも注目してほしい。

訥々と語る言葉の端々から「勝ちたい」気持ちが溢れ出ているインタビュー。毎回、彼の試合を見れば、その闘志がこぼれ落ちそうなくらいに表現できている。あともう少し、見ている側からも歯痒さを感じずにはいられないけれども、やはりそれが幸島選手。

それは先日のタイトルマッチマッチのときに象徴されていたように思う。本気でこの瞬間に懸けてきた情熱。それをすべて投入できたからこそ流れる試合後の涙。いつかのあの「約束」を果たすことができるのは、一体いつになるのだろう。

若い頃にバンドでボーカルを務めていた彼は、上半身裸で叫ぶ激しいハードロッカー。リングに上がるのも単純に「目立ちたい」一心。ナイスミドル軽音部でもボーカルとギターを担当する彼は、ソロでオリジナル曲も制作している。普段の穏やかな姿からは想像できない姿と声で『武尊三点盛り』を歌う。

居酒屋・キック・音楽。
好きが昂じて活動の域が広い彼の、そのエネルギーの根源にある想いは何なのか。映画の中で、その答えを見つけてください。

高橋典幸選手

【微笑みの腹黒シュートボクサー】

絵に描いたようなフツーの平々凡々なサラリーマンおじさんが、かわいらしいファンシーキャラを販売しているというのが特徴で、どこかで目にしたことのある「あのキャラ」を扱って、あちらこちらに飛び回っているそうです。

最近はゴルフに目覚めてしまったようですが、なぜか格闘技、とりわけシュートボクシングに入れ込んでいるようで、選手の追っかけだけかと思えば、ラウンドガールともツーショットを撮りに走るという、これまたよくある光景。

そんなフツーの人でもナイスミドルに参戦して、自信をつけて仕事に戻るという、これはこれで健全な姿を見せてくれています。ナイスミドルは強者だらけの世界ですから、謙虚に闘いに挑む姿勢ではあるものの、普段の練習では真剣なファイターの目になる。

営業マンなだけに気遣いはすごく、何度も撮影を重ねましたが、その度に気遣い、それ以外でも気遣い。でも周りがボケ気味のイジりをかますと、激しくツッコんでくるのが、どうもお決まりのようで、本人もその役割を十分に自覚し、こなしている。

こんなどこにでもいそうな人でも、ナイスミドルのリングに上がっているという、まさに象徴とも言える選手。

そういう選手がどんな心情で参戦しているのか?
ポロッと本音を話してくださいましたが、さて映画本編ではどのように描かれているのか?
お楽しみに!

高橋澄人選手

【エロ男爵・手技研究会】

「イケメンなのに、エロいのが勿体ない」

飲みの席に変態仮面のコスプレで現れ、周りの人の発言もすべてエロ方面へ持っていってしまうのに、地元の遊園地でスパイダーマンに扮して子供たちと戯れ、ファンの子供たちもいるという。やることは突飛の一言に尽きるが、悪い評判をまったく聞かない。

元々役者だったこともあって、人前では確固たる自信と余裕がある振る舞いで魅了する。軽くカメラを振っただけでも、即座にアドリブで返してくる。人を楽しませようとする気持ちで溢れている。

この映画の制作初期段階の頃「どんな選手がナイスミドルにいるのか?」「誰に声をかけるべきか?」路頭に迷っているようなときに、彼は出稽古やイベントに誘ってくれたり、選手との出会いのきっかけを作ってくれた選手。エロの話をしているかと思えば、気がつけばいつのまにか大切なことを伝えてくれている。かなり面倒を見てもらいました。

試合へのエントリーに当たって、対戦相手との実力差を見るに、日和った発言をしておきながら、いざとなれば覚悟を決めてリングに上がる。そしてその試合内容たるや、実力者そのもの。そのいきさつ自体を笑いに変えて喜ばせてくれる、真のエンターテイナー。

いまは故郷の新潟に帰ってしまって、なかなか顔を合わせる機会もなくなりましたが、それでもナイスミドルへの想いは変わっていないという。

男にも女にも向ける細かな気遣いと、奥底に秘める熱いもの。表と裏のギャップの激しいところに、彼の人気の度合いを図ってとれる。

ウチも外もイケメンの彼が独身なのは不思議なところですが、そのイケメンぶりは是非、映画の本編でご確認ください。

Dr インクレチン選手

【フェザー級 第2代王者・生活習慣病根絶を目論む男】

僕が米子へ向かったのは、撮影のためであることと同時に、何かを得られるだろうという期待を込めての、見知らぬ土地への旅でもあった。車窓から流れる景色は、都市の輪郭がほどけ、山の遠近とともに空が広くなる。これが山陰というところなのだろう。

3日間滞在した米子では、米子市内の城跡からクリニック、そして海岸から大山のドクターお気に入りの場所へ。滞在中の僕のために、ドクターは惜しみなく時間を割いてくれた。オープンカーの助手席に揺られ、風を切りながら大山の麓まで走る。リング上で「蝶」のように舞う美しいキックと同じく、その洗練された所作は、ハンドルを握る姿も鮮やかにフレームを彩っていく。

白衣を脱ぎ、リングに上がる。どちらの場所でも、同じ目で物事を見ていた。決して派手な振る舞いをする人ではない。しかし、ふとした瞬間に漏れる言葉には、確固たる信念が宿っている。静かな佇まいの鋭い瞳の奥に、これまで積み上げてきた「真理」が見えた気がした。

インタビューは、あえて対照的な2つのシチュエーションで行った。
ひとつはクリニックで、もうひとつは波の音を背負いながら。僕はあえて、答えの出ないような漠然とした問いを投げてみた。

映画の軸になるものを常に意識して撮影をしていたので、いかにそこに近づけることができるかが、インタビューのキモでもあった。ただドクターは答えを誘導するまでもなく、おそらくその狙いを感じて言葉を選ぶ人ではないかと、そんなイメージをしていた。ひとりの人間への問いであって、ドクターの深みに潜っていくような、そんな感覚で。

ドクターが人として大切にしていること。その哲学が、リラックスした自然体のまま言葉に溶け出していく。長い時間をかけてドクターの中に積み上がってきたものたちが、深層意識の中からスッと出てきたような感触だった。ドクターがふと口にしたある一言が、僕の頭から離れなかった。それは深いのに、潔いほどにシンプルだった。その言葉は映画の中に刻まれています。

ドクターはその装いからもわかる通り、熱烈なイタリア好きだ。「いつかカフェをやりたい」という夢を語ることもある。イタリアの街を流れる空気、生きることへの情熱、そして物事を進める独自のスピード感。それらは驚くほど、ドクターの本質と共鳴しているように見えた。

ドキュメンタリーを撮る上で最も贅沢な瞬間は、撮影や作品を超えたところの、被写体との想いの交差を感じられるときではないか。この日に記録されたものが、きっとこの映画の背骨のひとつになったことでしょう。

物事の本質を静かに見つめ続けているドクター。そういう人の言葉を記録させてもらえたことは、彼と出会うことのできた奇跡が生んだものでもある。そんな奇跡から生まれる映画。どのような熱を帯びて皆さんに届くのか、僕も楽しみです。

加藤巧選手

【ファインダー越しのスナイパー】

長友選手とタイトルを争った相手で、ベルトへの挑戦もされた選手です。
もう引退された感じにはなってしまいましたが、いつかまたリングに上がる日が来ることを期待しています。

加藤選手との出会いはキックではなく、カメラでした。
自分は毎回、イベント会場では試合の記録映像を撮影しているので、試合以外の選手の自然な風景を撮ることができませんでした。人伝に会場内を撮ったり、選手に声をかけてカメラを回してもらっていたところ、なんとも違和感のないフレームさばきをする映像が手元に来ていたので「誰が撮ったんですか?」もうその瞬間には会場カメラはこの人しかいない。そう思える方でした。

もともと選手の方ですから、選手と話すタイミングや距離感が自然とわかっているのでしょう。まったく違和感のない選手たちの表情を美しく捉えていた素材に、思わずうなってしまいました。それだけでなく、見る人に興味を持たせられるような撮り方を無意識にうちにやっていたので「初めてカメラを回した」と聞いたときは、驚きしかありませんでした。

自分も独特のカメラワークをすることもあり、その辺のセンスが非常に近く感じられたことも、プラスの効果がありました。自分としては加藤選手のカメラワークで、作品が一段も二段も昇華された場面が多々あったことを断言できます。また自作の制作の際には、撮影クルーとして声をかけたいと思える動きでした。

たまに毒の強いコメントをするのがご愛嬌ですが、加藤選手の地元でインタビュー撮影した際は、非常に熱のこもった、温度のある言葉をいただきました。出演者としても作品を盛り上げてくださったのは、その魂を記録に残せて、今後も振り返られる形にしてくださいました。

選手の一人ではありますが、他の方とはまた異なった角度から作品に力を与えてくださった、心強いパートナーです。

むぅちゃんぷる〜選手

【富士の裾野のキジムナー】

そのリングネームからもわかるように沖縄好きで、どこか飄々とした、それでいて独特の色彩を持った空気感。むぅちゃんぷる〜選手は、還暦もゆうに超えた64歳。昨今の出場選手の中では最年長かと思われます。

実はむぅちゃんぷる〜選手、若い頃には自主映画の制作に夢中になっていたという経歴の持ち主。ザラついた映像の中で、荒削りな光りを放っていた当時の記録を、ご自宅で拝見させていただきました。

あの頃の情熱そのままに、還暦越えのリングでも、老獪な光を放って試合に臨んでおられます。

僕がむぅちゃんぷる〜選手にカメラを向けていたときは、再びナイスミドルのリングに立つために、自身の体のメンテナンスをされていた後でした。陽気な奥様も共に撮影させていただきました。

むぅちゃんぷる〜選手も奥様も、底抜けに明るく前向きで、僕はその姿に励まされた部分もあり、自分の中に小さな灯が灯されたようにも感じました。

撮影は富士の裾野で行い、幸いにも天候に恵まれ、むぅちゃんぷる〜選手らしい影を感じさせない映像にすることができました。

息を切らせながらも、練習にも試合にも真摯に取り組む姿を見、そして年齢のことを考えると、「まだ続けたい!」というその気持ちはどこから湧いてくるのか?
むぅちゃんぷる〜選手の発する一言一言が、これまで経てきたときを刻むように、重くのしかかってきます。

撮影から時は経ちましたが、いまだに現役バリバリ。ケガをしながらも謙虚で柔和な態度で、出場する機会を常にうかがっています。

NICE MIDDLEから出現した「奇跡のひとり」として、語り継がれていくであろう選手です。

ちなみに奥様がリング上でパフォーマンスされたときのイメージは「ヤシの木」だそうです。映画をお楽しみに🤭

長友亮二選手

【強面の闘うラーメン屋】

中華そばながとも
美味いのでとにかく行ってみてください。
ボクは半チャンラーメンのセットを注文することが多いです。麻婆もオススメです。

そのチャーハンを作るときに浮き上がる右腕の血管。およそ還暦を超えた人の腕には見えません。いつお店に行っても鍛え上げられた肉体ととともに、強面が静かに囁く「いらっしゃいませ」

初来店だとどうしても後退りしてしまいそうですが、食べたらゾッコン。「これが美味いんだ!」そして出てきたものには誰も文句言いません。うまいから。

不器用ながらに勝っても負けても試合に挑んで行く姿勢。まるでかつてのアンディ・フグを彷彿とさせる真っ直ぐな目が、どうにもカメラを向けたくなる一因となっています。

誰よりもストイックなほどに究極を突き詰めています。そこからいろいろと発する物語を映画の中で描いています。「どうしてそうなる?」と突っ込みたくなるほどに不器用な生き方。無条件に応援したくなります。

階級もバンタム・フェザー・ライトと「どっかに焦点絞った方がいいんじゃないの?」とも素人ながらに思いますが、還暦を超えても、その目を見れば想いは極めて純粋。「3階級制覇やります」

映画の中でもほとんどノーガードで挑んでくださいました。ボクが惹かれるのはそんな駆け引きのない純粋さ。男気で溢れています。ノーリーズンで応援したい選手です!

深見裕選手

【バンタム級 第3代王者】

チャンピオンになるために、仕事と練習ばかりの日々を送り続け、ジム以外でも練習をして、タイトルマッチを渇望していました。そしてイッキョー選手に挑戦し、一度は敗れました。

体重が軽すぎて、体調が振るわないことも多かったようですが、川向選手との挑戦者決定戦を制し、2度目の挑戦でようやく戴冠。塩試合と言われつつも、負けなしのままタイトルを返上。フェザー級に階級を上げ、現在、二階級制覇を目指しています。

深見選手には、幾度となく撮影にご協力いただき、回を重ねるごとに慣れてきて、ラストのインタビューでは、かなりの自然体で印象的な話をしていただきました。

お酒が好きな選手ですから、酒の席で一緒になることも多く、酔うと別人の動きを始めます。いわゆる酔拳でしょうか?

ナイスミドル軽音楽部ではベースを担当。奇抜な楽器で演奏する姿も、試合のときのように、静かに微動だにしない感じで弾いています。

強さと優しさを兼ね備えたチャンピオン。奥さんと2人の娘さんに囲まれた、家族団欒のシーンは必見。まだ幼い娘さんの映像は、ご家族の中で貴重な記録として残されることでしょう。

川向寿和選手

【戦績120戦】2019年時点(17年間)

戦績が示しているように、とにかく試合をしていたということです。
もちろんNICE MIDDLEにもよく出場されていました。

「掟破りの海上自衛官」
いつも飄々として、独特な話し方なこともあり、撮影時にも人懐っこい感じでインタビューにも答えてくださいました。自衛隊の施設近くや、川向選手の地元の練習場で撮影を行いました。本当に自分の周りの親しい方と共に、技を積み上げているような、そんな感じを受けました。いつも声掛けをしてくださいますし、撮影時も丁寧にご対応いただきました。

普段から軽い感じで話されるので、その雰囲気がウソのようになることもありました。
突っ込んだ話になると思いもよらず、真剣な眼差して返してこられることがあり、ホントにNICE MIDDLEが好きなんだなあ、と思わされる、そういう回答が印象的でした。

タイトル戦線にもしょっちゅう絡んでいて、菅野一教選手とも4度の対戦(3度のタイトルマッチ)をしているということでした。久しくNICE MIDDLEではお見かけしていませんが、まだまだ若い。その情熱がほとばしるような、熱い試合をまた見せて欲しいです!