映画制作というと、一般的には劇映画のことを想像されるかとは思いますが、ドキュメンタリーの場合、同じ映画とはいえ、制作の行程はかなり異なってきます。
特に違ってくるのは、台本の有る無しです。
劇映画だと撮影の前に台本を作る事で、そこから先の行程が見えるようになるので、撮影前までの準備が重要になります。台本があることで、撮影・編集・仕上げの作業の予定が決まり、その逆算で上映の予定や映画祭出品の予定が立ってきます。
ドキュメンタリーは企画やコンセプトを作り、それに沿った形で先に撮影を進めて行く形。撮影中には追っている事象の変化によって、制作者側も変化に合わせていかなくてはならないので、場合によっては当初の企画内容からズレていく可能性もありえます。大抵はいい方向への変化であるから上映にこぎ着けているのだろうと思います。
撮影しながらも編集をするわけですが、ドキュメンタリーの編集は作り手側の意図が濃く出てくるもので、それこそ作家の個性そのもののようになるのでしょう。編集の内容によっては撮影素材が足りなくなることも多いので、編集しながら追加撮影することもよくあります。
ナイスミドルの映画では、選手を主体にナイスミドルのコンセプト的なものを描こうとしているわけですが、それより前に、作中で描くもののベースとなる思想的なものを固めることにも邁進していました。企画を考え始めた当初は、どんな選手がいるかなど知るわけもなく、制作に協力的な選手を中心に、作品の方向性など見えないところから練習風景の撮影を始め、徐々に選手のことを知るところから始めました。
個々の選手の考え方はバラバラなので、それをいかにして一本の作品としていくか。ここが肝心。あの選手とあの選手の関係性は?とか、考えがダブらないようにとか、表現しようとしている内容に合う形でそれぞれの選手のストーリーを、撮影・編集を進めながら紡いでいくようにしていきます。どんなにいい映像が撮れていたとしても、作品にそぐわないと判断したならば、カットせざるを得なくもなってしまいます。
撮影を始めてから具体的に作品を構築していくので、ドキュメンタリーは完成まで時間がかかるケースがほとんどです。
仮編集が上がってから映像の色調整、音の調整、音楽入れ、ナレーション収録、権利処理などの作業をして作品の完成となります。台本は編集が終わってから作ります。意味的には台本ということでもありますが、どちらかというとナレーション原稿的な意味合いが強いかもしれません。
同時に映画祭の出品や上映館との交渉やパンフレットやチラシ・ポスターの制作など、リリースに向けての作業が始まります。
現状は仮編集を進めている段階です。まだストーリーを語れる段階ではありませんが、仮編集の後半に入り始めているので、何となくの構造的なことは言えるような感じではあります。完成はあともう少し楽しみにお待ちいただきたく思います。